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マンション管理組合の健全な運営に役立つヒント集

あなたのマンションの「マンションFP」になろう!(つづき)

から時間があきましたが、FP(フィナンシャルプランナー)としてマンションの人生設計を簡単なモデル数字で見てみましょう。あなたのマンションは健全に老後を乗り切る準備が出来ていますか?

●マンションの人生60年サイクル

通常1戸当り数千万円の負担が必要となるマンションの建替えは実質的に不可能と考えた方がよい一方、立地や建物の質がいいマンションは、適切に手入れをしていけば100年経っても建物としての価値を保ち続けることが考えられます。

古くなった建物に住み続けられるかどうかを決定的に左右するのが“水回り”の健全性です。配管の老朽化により上水や汚水の水漏れを繰り返す建物では、階下の漏水被害とともに鉄筋の腐食による躯体コンクリートの爆裂等も急速に進みます。給水管、配水管の抜本的更新期間を60年と想定すると、これを1サイクルとしてそのなかでエレベーターその他の建築設備も更新整備していくことにより、60年で設備が新しく生まれかわって次の60年に向かうというマンションの人生サイクルを思い描くことが出来ます。

このサイクルをきちんと回せるようにすることが、マンションFPの役割です。

●勝負は前半30年でいかに余剰資金を残すか

前回見たように、マンションの修繕で建物設備の修繕費用がかさむのは、60年サイクルの後半、築30年~60年の間です。

簡単なモデルケースとして、60年間に積立てる修繕費用全体のうち、前半の30年で使っていい額を全体の3分の1、残りの3分の2は後半の30年にとっておくものとしましょう。居住者が高齢化する後半の30年間に前半の倍額の積立金を集めることは出来ない以上、60年サイクルをうまく回せるかどうかは、前半30年で後半30年に備える余剰資金をいかに蓄えられるかにかかっています。

●修繕積立金の金づかい配分モデル

新築後60年間 = 720ヵ月分の積立金全体を、いつどれくらいの配分で使うことが出来るのか、先ほどのモデルをもう一段掘り下げてみましょう。(簡単のため60年間均等積立とします。)

前半の30年間に使えるのは全体の3分の1である240ヵ月分になります。この間に第1回、第2回の大規模修繕とその間の中小修繕をするとして、建物・設備が古くなる第2回に近づくにつれて費用がかかることから、竣工から第1回の大規模修繕終了時までに使っていい金額は100ヵ月分、その後第2回の大規模修繕を含めて築30年までに使っていい金額は140ヵ月分とします。

このことは、第1回の大規模修繕を築15年 = 180ヵ月で実施した場合、竣工以来の費用を含めて使っていいのは半分強の100ヵ月分で、残り80ヵ月分は将来に備えて温存しなければならないことを意味します。また、築30年 = 360ヵ月時点ではそれまでの総積立額の3分の1 = 120ヵ月分を将来に備えて残すことになります。

多くの管理組合が、以前に見たように一度に多額の費用をかけても特に効果が長続きするわけではない大規模修繕の際に、貯まっている修繕積立残高にほぼ見合う費用のかけ方をしているのは、将来大きなツケが回ってくる過剰な支出であることが分かります。

●1戸当りの修繕積立金額をもとにあなたのマンションの金づかいをチェック

上記のモデルを具体的な金額で理解するために、1戸当りの平均修繕積立金月額で考えてみましょう。平均月額は、あなたのマンションの決算報告書にある年間修繕積立金収入金額を戸数と12ヵ月で割れば簡単に計算することが出来ます。(修繕積立金が段階的に上がっている場合は、さらに60年間の平均額にする計算が必要です。)

あなたのマンションの平均月額が1万円であったなら、竣工から第1回の大規模修繕完了までにかけていい1戸当りの費用は100万円、そのうえで築15年時に1戸当り80万円の繰越残高を残していることが、先程のFPモデルに沿った資金の使い方ということになります。長期修繕計画表の工事費累計や次期繰越金を戸数で割れば、これらの数字も簡単にチェックすることが出来ます。

平均月額が1万円に達せず5,000円~8,000円程度(第1回大規模修繕完了までにかけられる費用は1戸当り50万円~80万円)しかないマンションにおいても、設計コンサルタントや管理会社の言うままに1戸当り100万円以上の費用をかけているとすると、そういったマンションでは将来が大いに危ぶまれます。

●負担可能で実情に合った費用予測を

以上は、マンションのライフステージのどこにどれくらいの比率でお金をかけていいかという「相対的」資金配分をチェックするものでした。おそらく多くのマンションでこのままでは問題があることに気付いたのではないでしょうか。

次はこれをきっかけに修繕積立金の「絶対額」が60年サイクルを回すのに足りているかという見直しも必要です。自分たちのマンションの建物(現在の状態、配管補修のしやすい構造か、タワマンか等)や設備内容(機械式駐車場や特殊な設備の有無等)とその修繕対策について専門家をまじえて管理組合としての理解を深め、負担可能で実情に合った費用予測をたてることが重要です。

●気付いたら早めの立て直しを

あなたのマンションに老後破綻の危険性があることに気付いたら、やることは家計のFPの場合と同じです。毎月の生活費(管理費)を思い切って見直し、折々の出費(各種補修費用)も抑えて、浮いた分を貯蓄(修繕積立金)に回すとともに、収入(毎月積立額)の増加もはかって将来必要な資金を貯めていくしかありません。取り組みは早ければ早いほどいいのも家計の場合と同じです。

老朽化するマンションが急増するなか積立金不足で廃墟化への道をたどる事例に警鐘を鳴らす新聞・雑誌等の記事が増えてきているように思います。東京都では管理不全マンションを予防するため、昭和58年以前に建てられたマンションに管理状況の届出を義務付ける新たな条例を今年3月に作りました。一方で、まだまだ多くのマンション所有者が自分のマンションの将来を他人事のように考えているのも実情ではないでしょうか。「マンションFP」のタイトルに興味を持ってこのブログをここまで読んでいただいたあなたのような方が、管理組合での話し合いのきっかけを作ってもらえたらと思います。

60年サイクルを乗り越えて100年価値を保つマンションで安心して暮らせる人が増えていくことを願います。

(NK)

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