「大規模修繕」は「建物を大規模に修繕」するものだと思っている皆さん、少しお待ち下さい。
大がかりな建物工事を思い起こさせる「大規模修繕」という名称や、建物全体を足場で覆って中で何やら重大な建築工事をしていそうな見かけは、管理組合から気前よく資金を引出すためには、業界にとって都合のよいお膳立てかも知れません。けれども、こうした名称や見かけから受ける印象と実際の工事の中身にはかなりギャップがあります。
「大規模修繕」の具体的中身は通常以下のように分類でき、1, 2は建物本体コンクリートに関わるもの、3以下はその他の付属部分に関するものです。
このうち「1. 外壁補修」は何やら本格的な建物補修のように聞こえますが、主な中身は昔のマンションであれば外壁のペンキ・塗装の塗り直しです。より新しいマンションでは外壁がタイル仕上げになっていることが多いため、作業自体はタイルの補修・貼替えとなりますが、建物コンクリート表面の仕上げの修復(建物本体にとってはペンキの塗り直しと同じ意味合い)であることには変わりありません。
大規模修繕の説明で、コンクリート表面のひび割れから内部に水がしみ込み鉄筋から赤いサビ汁が出ているのを放置すると、最終的には鉄筋がボロボロになってコンクリートも割れて落ちてしまう(「爆裂」といいます)などの話しを聞くことがあります。大規模修繕はこうした深刻な状態になる前にひび割れ部分を補修するためのもので、実際の工事内容はひび割れに沿ってコンクリート表面にU字型の溝を掘りそこにパテを埋めてそれ以上の浸水を防ぐというものです。傷口に絆創膏を貼るようなもので、費用としても一カ所当りせいぜい一万円程度の工事であり、建物への深刻なダメージを防ぐためにさぞ本格的な建築補修工事をするのかと思っていると拍子抜けします。
「2. 防水工事」も、ウレタン塗料による防水塗装の他に、屋上ではアスファルト防水層、外階段・バルコニーでは塩ビシートなどの材料が使われることもありますが、いずれも広い意味でペンキ塗りと同等のコンクリート表面の保護層の修復です。
結局のところ、「大規模修繕」は建物本体にとっては「ペンキ塗り」と「絆創膏貼り」のレベルの補修と考えた方が実態に合っています。建物本体に手を入れるような本格的建築工事は最初から含まれていません。
修繕項目のうち、「6. 各種設備」には、給水・排水・電気・空調・消防・エレベーター・機械式駐車場等が含まれ、「4. 建具・金物」には手すり・窓サッシ・各種扉等が含まれています。これらの多くは、手入れしながら末永く使っていくしかない建物本体とは異なり、いずれ全面交換した方がよい時期が来ます。
「大規模修繕」は本体コンクリートの劣化進行や外壁タイルの落下が起きない適切な時期に実施することは重要ですが、建物本体に関して出来る修繕はあくまで定期的にずっと繰り返すコンクリート表層面の手入れです。こうした意味合いを理解して、第1回目、第2回目では、名称に惑わされて過大な費用を掛けすぎないように注意し、設備・建具の更新に本格的に費用を掛けなければならない第3回目およびその前後の期間(築30年~50年程度)に備えてなるべく資金を温存するのが賢い取組み方と言えるのではないでしょうか。
(NK)
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(投稿日:2018年08月30日 | カテゴリー:マンションの長期修繕計画, 改修工事)