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マンション管理組合の健全な運営に役立つヒント集

競争見積りの落とし穴

建物の部分補修、照明のLED化、ポンプの交換などなど、マンションに関する様々な工事について複数の施工業者から見積りを取っている管理組合は多いと思います。でも、そこには気をつけたい二つのポイントがあります。

●(ポイントその1)管理会社による「名ばかり競争見積り」

管理組合で、複数の施工業者から見積りを取るように管理会社に指示しているケースはよくあります。でも、その見積り取得を管理会社まかせにしているとどうでしょう。管理会社は、息のかかったいくつかの業者から似たり寄ったりの見積りを提出させて、結局は自社に都合のいい施工会社(多くの場合管理会社に何らかの見返りがある)に決まるように金額調整している可能性が高いと考えた方がいいでしょう。競争の結果適正な業者を選んだように見せかける「名ばかり競争見積り」です。

●理事会で独自に見積りを

「名ばかり競争見積り」を防ぐには、管理会社任せにせず理事会が自ら動くことが必要です。管理会社が用意する見積りに加えて、少なくとも1社から理事会が独自に見積りを取ってみることにより、管理会社との間に適度な緊張関係も生まれます。

そのためにはまず、見積りを取る業者を探さないといけません。信頼できる外部の専門家に相談できる場合は、候補を挙げてもらうのが1つの方法です。そうでない場合はインターネット等で探すことになります。なめらかな文章でごもっともなことだけが書いてあるホームページの業者よりは、少し泥臭い現場の施工写真や概算費用などをゴタゴタのせている現場感のある業者の方が、面白い結果が出ることが多いように思います。

興味をひく業者が1~2社見つかったら、連絡を取って実際に見積りを依頼します。この時は、管理会社を通さずに理事会から直接依頼しましょう。困っている顧客からの直接の話しの方が、業者もやる気が出るように感じます。反対に、管理会社を通すと何らかの圧力や要求が入り込む余地が生まれ、場合によってはせっかく見つけた業者が本気の見積りを出さなくなる懸念もあります。

また、管理会社側の見積り金額が先に出ている場合は、理事会で取る見積りと同じタイミングで管理会社側にも再度提案の機会を与えましょう。後出しジャンケンでなく、あくまでも公平なプロセスにして、管理会社との信頼関係を壊さない配慮も必要です。

独自見積りの結果、管理会社側の提案より相当低い金額の見積りが出てくることも十分あり得ます。その場合、管理会社からの提案でない業者を選ぶことに不安を感ずることがあるかも知れません。まず、理事会で見つけた業者に実績や具体的な保証内容について文書で出してもらい、管理会社側の提案と比較しながらよく理解しましょう。さらに、管理会社の指摘する不安要因などがあればその点の説明も求めた上で、いたずらに不安がらずに決めることも大事です。

●(ポイントその2)そもそも工事内容は妥当か?

理事会で業者に見積りを依頼する場合、二とおりの方法が考えられます。ひとつは管理会社側の見積りと同じ内容・仕様で見積りをとる方法です。よくあるのは、管理会社側から出された見積書の金額部分だけを伏せて、他の業者に同じ内容で見積りを依頼することです。これは同じ条件で費用比較ができるのでいい方法のように見えます。

でも、時としてより重要なのは、そもそも今その工事をする必要があるのか、また、必要があるとしてもどこの部分をどういう内容で工事をするのが妥当かという点です。こちらの方が、単純な業者間の比較よりずっと大きな費用の差が出ることが考えられます。そのためには、工事内容をあらかじめ指定するのではなく、別の専門業者にその業者としての見立てによる見積り提案をしてもらうことです。管理会社から入手した現状の写真や説明資料、必要なら現場を見てもらって提案を依頼します。

見積り内容を比較して、ある部分について工事に含めている業者と含めていない業者、あるいは工事内容の差について両社に説明を聞いて、どちらにするか理事会として判断していくことになります。相談できる専門家がいれば意見を聞き、いなくても両社の言い分や管理会社の意見も聞いて必要に応じてインターネット等を調べながらどちらかに決めていくようにします。最終的に工事内容をすり合わせた上で再度両社から見積りをとれば、同じ内容で費用の比較も出来ます。その際、使用する素材や施工方法などは違っていても、工事結果に対する保証内容で比較すれば、細かい技術仕様にとらわれなくても済みます。

●一度試してみましょう

工事内容まで理事会で決めるとなると、とても難しいことのように聞こえるかもしれません。でもそれは業者の説明やその根拠をよく聞いて、それに応じて調べながら、どちらがより納得できるかを判断していく作業です。あらかじめ技術的な知識がなければ出来ないというものではありません。

但し、理事会として手間と時間はかかるので、数百万円以上程度の工事案件で、管理会社の提案や説明に納得感が薄い場合に試してみる価値があります。

また、理事会でいつも競争力のある業者が見つけられるというわけではないので、結果的に管理会社側の見積りと大差がないこともあるでしょう。その場合は、管理会社提案の業者にしておくのもありです。最初はあまり難しく考えず、一度試してみると、今後の管理会社の姿勢に真剣みが増してくる効果があるかも知れません。

(NK)

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