緊急事態宣言が5月末日まで延長されることになった。管理組合にとって5月は総会開催シーズンであり、緊急事態宣言下で総会開催の可否を決める悩ましい判断に迫られていることとお察しする。
現在の緊急事態宣言が発令された状況の中で、総会を開催しない(延期)場合にどのような影響があるのかを考えよう。
①予算執行の観点
②管理委託契約更新の観点
③現役員の役職継続の観点
まず①の予算執行については標準管理規約では「会計年度開始後、承認されるまでの間に『経常的で、止むを得ない』場合は理事会の承認で支出できる。」とされているので、予算外の工事などを除き日常の支出に関しては特段問題ない。
次に②管理委託契約更新は、組合員の「安全・安心のための止むを得ない」対応であることから理事会決議により、現在の契約と同一条件で「暫定契約」することで、管理に隙間ができることを回避できる。これは管理会社の団体「マンション管理業協会」の見解でもある。
さらに③は、総会が開催できず、新役員が総会で選任されない場合は、現在の役員がそのまま役職を継続することになる。この辺りは一度総会を延期した場合に、次にいつ総会が開催できるか不透明な中で、いつまでも引継ぎができないことになりかねず、その判断が難しいところである。
こうした管理組合として重大な判断をするにしても、問題は緊急事態宣言下での理事会開催の是非である。「対面」での会議は避けることが求められるなかで、どのように理事会を開催するか難しいところである。少し補足すると東京都の「緊急事態措置等」では、共同住宅は「社会生活を維持するうえで必要な施設」とされているが、「適切な感染防止対策」することが明記され、具体的な防止策として「密集する会議の中止(対面による会議を避け、電話会議やビデオ会議を利用)」と求められている。ここまで明文化された中での、対面による理事会への出席には、抵抗がある役員や組合員も出てくるだろう。
一方でメールによる理事会開催を考えている組合もあるだろう。しかし、標準管理規約では。予め電磁的方法を定めている組合を除き、メールでの重要な判断は認められていない。緊急事態だからという言い訳はあるものの、メールではどうしても一方通行となりがちで、理事が意見をもって協議することが難しくなる。ましてや総会に関わる重大な判断が求められる理事会だから慎重に臨みたい。
そこで緊急事態宣言下で提案したいのは、オンライン方式による理事会の開催である。オンライン方式であれば、画面を見ながらタイムリーに意見を出し合い、対面と変わりなく審議できることは明らかだ。また管理規約で「電磁的方式」の規定がなかったとしても、外出自粛が社会的に求められている中で、組合員(役員)の「安全・安心のため」であれば、オンライン理事会とすることは理にかなうことになろう。
現在、ビデオ通話会議システムは企業のテレワークの普及とともに拡大しており、無償で使えるシステムも、LINE、Skype、ZOOMなど様々である。これらを活用するなど工夫して対面によらずに理事会を開催することを推奨したい。
オンラインによる理事会を実施するうえでの条件は、参加者がスマホか、パソコンか、タブレットを所有しWiFi環境にあることが必須である。これについては既にスマホの普及率が50代以下で9割、60代でも7割、70代で5割(総務省情報通信白書平成30年)と言った現状を考えると、決して実現できないことではないだろう。むしろ、今までやったことがないので、尻込みする役員もいることから、操作方法など積極的に支援することも重要となる。
では管理会社はこのオンライン理事会をどう考えるかというと、決して積極的とは言えない。安易に総会を先送りする傾向にあるように思えてならない。緊急事態宣言の出口が見えない中で、加えて専門家会議が最近になって打ち出した「新しい生活様式」の中でも、対面での会議は避け、オンラインを活用する指針が出されている以上、管理組合においてもこの問題をいつまでも、先送り放置するわけにはいかないだろう。こうした状況も踏まえ、理事会をいつでも対面によらず実施できる体制を準備しておくことは有効であり、これからの「新しい生活様式」の中で必要なことだと考える。
(マンション管理士 K.I)
(投稿日:2020年05月15日 | カテゴリー:未分類)