管理組合が抱える課題の中には、専門的な知識や組合内をまとめていくためのノウハウがないとうまく解決していくのが難しいものがあります。また、潜在的な長期資金不足など、管理組合にとってきわめて重要な問題であるにもかかわらず、知識や経験がないと問題の存在自体に気付かないものもあります。こうした課題の解決のために、有能な外部の専門家から助言や解決の支援を受けるのはとても有益な方法です。
その一方で、前回のブログでは、相手の知識や経験をよく見きわめずに専門家として顧問契約した結果、かえって問題を抱えて苦慮している管理組合の例を見ました。
今回は、こうしたことにならないためにはどのように専門家を活用したらよいか、注意点を含めてご紹介します。
専門家の活用にあたっては、特定の具体的な課題(大規模修繕の実施支援、管理費・管理会社の見直し、管理規約の改正、長期修繕計画の見直しなど)について、一定の期間内に取り決められた成果物を出して業務を終了する契約とするのが基本です。期待する成果が出ない場合には途中で契約を解除できるよう、業務内容や成果物を出来るだけ具体的に取り決めておくこと、業務をいくつかの段階に区切って実施した段階に応じてそこまでの料金を決めておくことなど、契約条件にも気を配る必要があります。
組合の運営全般に関する顧問契約を考えている場合は、まずは上記の特定の業務依頼の中でその仕事ぶりを見ながら他の課題についても相談してみるのがよいでしょう。マンション管理士といっても、試験で資格を取っただけで現場経験の浅い管理士も少なくありません。管理組合の日々の悩みに理解と共感を持ち、机上の法律論等でなく、現場の経験をふまえて的確な助言と実施の支援が出来る専門家であって、はじめて顧問契約を結ぶ価値があります。
その場合もすべてお任せにするのではなく、専門家の助言を聞いて理事会が自分達で判断し、その結果について助言が適切であったかを含めて検証する姿勢が重要です。業務に満足がいかない場合は、組合の判断でいつでも顧問契約を解除できる契約条件としておくことも必要です。
ひとつ注意しておかなければならないのは、「外部の専門家にとって管理組合の資金は所詮は他人の金である」ということです。
多くの専門家は、最初は自分の知識や経験を活かして、自分の得る報酬の何倍もの利益や貢献を管理組合にもたらしたいと考えて仕事を始めたはずです。でも、そうした専門家が組合の資金を1円でも無駄にしないように、手間暇を惜しまず知識と経験をフル動員して素晴らしい成果を上げていても、管理組合が問題自体に無関心で専門家の仕事ぶりを評価することもなく任せきりだったらどうでしょう。この場合、逆に専門家が手抜きをしたり、どうせ払うのは管理組合だからと割高な業者に任せていたりしてもほとんど誰も気付きません。また、こうした専門家には発注先業者から「またよろしく」と謝礼等の申し出がある場合もあるでしょう。このような状況で、人が自分自身の利益の増大を考えず、他人の金のために長い期間にわたって公明正大に最善の仕事をし続けるというのはむずかしいことです。(この点については管理会社も同じです。)
管理組合が、自分のお金(管理費・修繕積立金)をまるごと他人にあずけてチェックもせずに任せきりでは、決して良い結果になりません。
前述のことから、理事会が楽になるからといって外部の専門家を理事や管理者にすることは非常に危険です。
最初は善意であっても、管理組合が言いなりであれば業者との癒着が生まれるスキが出来ます。「専門家」がその気になれば、シロウトの管理組合を相手にもっともらしい相見積もりをそろえて特定の業者に受注させることなどたやすいことです。毎年使われる管理費や設備修理、大規模修繕の時の費用を考えると、マンション管理には常に大きなお金が動いており、これを支配することは一つの利権になります。
外部の専門家を一旦理事や理事長または管理者にしてしまうと、総会の議案や運営がコントロールされやすく契約の解除はきわめて困難になります。外部専門家の活用はアドバイザーとしての顧問契約までとし、理事や理事長または管理者にすることは避けるべきです。
(NK)
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住まいブログ マンション管理・経営支援
(投稿日:2016年11月10日 | カテゴリー:マンション管理組合)