機械式駐車場に前面ゲート等の新たな安全対策を義務付けた駐車場法施行規則の改正が2015年1月1日に施行されました。これを受けてメーカー団体である立体駐車場工業会では改正に応じた認証のために「機械式駐車場技術基準」を2015年6月に改訂しています。2016年7月1日からは経過措置期間も終了し、この日以降新規に設置されるものについては新規則が全面的に適用されます。
駐車場法の対象となるのは不特定の利用者のための大規模駐車場(5,000㎡以上)なので、この改正はマンション居住者用の駐車場に直接適用されるものではありません。しかし、国交省では今回の改正と同時に各自治体が条例で定める「附置義務駐車場」についても同等の安全装置が設置されることが望ましいとして、雛形となる「標準駐車場条例」の改正内容を全国の知事・政令市長宛に通知しています。標準条例では商業地域、近隣商業地域、駐車場整備地区内で2,000㎡以上のマンション(共同住宅)にも一定台数の駐車場を設置することを義務付けおり、これが「附置義務駐車場」と呼ばれるものです。
マンション駐車場に関する自治体の実際の条例を見てみると、東京都、横浜市、さいたま市、千葉市ではいずれも「標準駐車場条例」とは形式、内容ともかなり異なっており独自色の強い内容を盛り込んだものもあります。その中で横浜市では上記の標準条例改正の内容が既に条文に反映されています。条文の変更が表面上確認できないその他の自治体でも、今回の改正は安全性向上に関するものなので、運用細則等において対応をはかっていることが考えられます。
但し、これらの条例はいずれも建物の新築または増築・用途変更の際の申請手続きとなっています。このため新築マンション等には当然適用されますが、既存のマンションで駐車場設備だけを更新する場合については手続き上は申請の対象にならないようにも見受けられます。
駐車場メーカーや管理会社から新しい技術基準に適合する安全装置の設置を勧めるという案内を受けている管理組合もあると思います。今回の改正は上記のように既存の駐車場に安全装置の設置を義務付けるものではなく、マンションについては各自治体の条例によること、次項のように事故防止は安全装置だけでなく利用者の心構えによる部分も大きいことを理解したうえで冷静に対応を検討するのがよいと思います。
既存のマンションにおける前面ゲートの新たな設置については、現実的には駐車場機械を入れ替える際に対応することになる場合が多いと思われます。この時、技術基準では前面ゲートと駐車場機械本体の間に20cmのスペース確保が必要になります。もし、このために別途条例で定められた最小の車路幅等を満たさなくなるような場合は、自治体の担当部門等と相談が必要になる場合があるかも知れません。
今回の安全装置強化の背景になったのは機械式駐車場で繰り返される重大事故です。2008年から2014年の7年間に26件の死亡・重症事故が起きており、このうち5割がマンション駐車場とされています。事故の原因としては機械操作時の注意不足や子供の予期せぬ行動などが指摘されています。実際、マンション居住者には機械式駐車場が重大な事故につながる危険性をもったものという認識が乏しく、十分な注意を払わずに機械を操作している利用者も多いのではないでしょうか。
事故防止のためにはまずマンション内でこうした危険性への注意を喚起し、駐車場の利用者が機械の操作や車への乗り降りの際に十分注意を払うこと、子供を駐車場の付近で遊ばせないことなどを呼びかけることによって、事故はかなり減らせるのではないかと思われます。立体駐車場工業会のホームページではこうした観点からの各種の安全利用パンフレットが閲覧・印刷できるようになっていますので、これらの配布や掲示も検討してみてはいかがでしょうか。
(NK)
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(投稿日:2016年04月18日 | カテゴリー:機械式駐車場の修繕等)