12月6日に開催された第2回マンション管理ゼミ、今回のテーマは「どうする!!金食い虫の機械式駐車場」。ゼミレポートの2回目は競争原理が働きにくく高止まりしがちな保守料金をどうする!!?です。
機械式駐車場の保守料金は当初車1台を載せるパレット当り月額 4,000円程度と比較的高い水準にありました。このため参入する企業が一時的に増えた結果、現在の相場は年4回の点検で月額 2,000円から3,000円程度に下がっています。地域や競争条件によってはさらに月額1,000円程度になっているケースも見られます。こうした料金の低下に伴って保守業務から撤退した会社も相次いでいます。
なお、保守の内容についても年12回(毎月)の点検となっている場合や、一部には故障時(不具合・利用者起因)の出動対応まで含む(部品交換等は別)場合もあり、料金を比較する時は注意が必要です。
機械式駐車場、特に屋外設置のものは、雨、風(飛散物へのセンサーの反応等)、雪(もともと積雪を考慮した設計になっていない)等の影響で何かしら故障が起きやすいものです。中でもパズル式は故障が多く故障しないように整備するのはほぼ不可能です。
こうしたことからエレベーターのように損耗部品の交換修理を含むフルメンテナンス契約は料金が高額になり過ぎて提供するメーカーがありません。
マンションで多く使われる機械式駐車場には2段又は3段の単純昇降式と、パレットを上下および横方向に移動させるパズル式(横行昇降式)があります。いずれも機械製品としてはそれほど複雑なものではなく、鉄板・鉄骨を加工して汎用の部品を組み合わせれば作れるので一時は2000社近くのメーカーが名乗りを上げた時期もありました。
その後、製品価格、保守料金の下落により撤退する会社が相次ぎ、現在機械式駐車場全般を積極的に手掛ける大手のメーカーは、IHI運搬機械、新明和工業、ニッパツ等に集約されてきています。また、これ以外のメーカーの中には独自性を加えたパズル式等に特化して事業を継続しているところもあります。メーカーや保守業者が減るにつれて競争原理が働きにくい状況になって来ています。
メーカー以外で機械式駐車場の保守を積極的に引き受ける会社は減っていますが、単純昇降式であればどこのメーカーでも構造や仕組みはほぼ同じであるため独立系保守業者を見付けることは難しくありません。
保守料金が上記の相場に比べて高いようであれば、競争見積りによって料金の引下げをはかったり安い保守業者に変えたりすることが出来ます。
パズル式、中でも大手の標準的な製品以外の場合はメーカー以外に保守をする会社が見当たらず、1台当り月額 \12,000円という高額な保守料金が設定されているケースについてゼミの出席者から相談がありました。こうした機種では保守に必要な技術情報が開示されていないため、独立系の会社は手を出せず競争原理がはたらかない状況になっています。
保守技術情報を開示せず高額な料金でメーカーが保守業務を独占していることは管理組合に不利益を与えている事になります。この点を竣工図書の不備として売主やメーカーにうったえ情報の提供を受けることが出来れば、この情報をもとに保守が出来る会社はあります。(仕組みがずっと複雑なエレベーターに独立系保守業者が多数存在するのはこうした保守技術情報の提供が法的に制度化されているからです。)但し法的な仕組みが未整備な機械式駐車場について必要な情報を得るのは容易ではないので、場合によっては訴訟も辞さないといった断固たる姿勢でのぞむことが必要になります。
(投稿日:2015年01月28日 | カテゴリー:機械式駐車場の修繕等)