12月6日に開催された第2回マンション管理ゼミ、今回のテーマは「どうする!!金食い虫の機械式駐車場」。機械式駐車場の保守業務も手掛け業界に精通した当支援センターの笹原俊一講師によるゼミのポイントを再び3回に分けて紹介します。1回目はまさに金食い虫、台数によって総額5000万円以上にもなる巨額の修繕計画費用をどうする!!?です。
エレベーター業界と同様にゼネコンへの売り込み競争の結果、マンション建築時の機械式駐車場の納入価格は車1台分当り30万円程度といったメーカーにとって利益の出ない水準におさえられています。点検保守料金についても一般的には当初に比べると半額前後にまで下がっています。こうした中で駐車場メーカーが大きな利益を狙えるのは巨額の修繕計画からという図式になっています。管理会社もこれに乗じて3割ほどの利益を上乗せするようなケースもあります。
立体駐車場の法定償却期間は15年ですが実際の寿命は設置環境によってかなり異なります。屋内であれば通常25年から30年はもちます。屋外は風雨にさらされるため通常は20年程度ですが、日当たりの良い場所なら錆が少ないので25年程度もちます。こうした寿命を念頭に駐車場をいつまで補修して使い続けるか計画する必要があります。寿命の5年前頃に最後の補修を実施して使い切るのが効率的です。
エレベーターとは異なり機械式駐車場には法律で定められた点検保守の基準がありません。このため、メーカーは独自に修繕計画を作成して予防的な部品交換をユーザーに働きかけます。また、ある1個の部品が故障したらその部品は交換時期が来たとして同じ部品が仮に400個使われていればその全てを交換するというやり方です。メーカーによる修繕計画は費用を負担する側の立場ではなく、少しでも故障のリスクが減るものは実施するという観点で作られているため、部品の予防交換等に巨額の費用がかかる内容になっています。
駐車場が故障した時に過度にメーカーを責めて故障が起きないような対策を要求することは予防交換を正当化してメーカーの思うつぼになる結果を生みます。
管理組合が高額の予防保守費用に疑問を抱いても、判断のもとになる情報がない中で事故の危険や故障の防止のためと言われると、結局はメーカーや管理会社の言いなりになってしまうケースがほとんどです。
こうした状況から抜け出すためにはメーカーからの提案に対して、過去の経緯を含めた現場の状況を把握している専門家が、本当に必要な予防保守なのか、予防保守するとしてもどの範囲まで実施するのが妥当かをメーカーとやり取りしながらその場で判断して管理組合を支援する体制が必要です。駐車場が一定の規模であれば、メーカーや管理会社の言いなりに高額の費用を払い続けるよりも下がる費用の一部を使って信頼できる専門家と顧問契約を結んでおく方がずっと有利になります。高額の費用に疑問を持つ場合は当(社)管理組合支援センターにご相談ください。
全ての部品を予防交換する方法は非常に高くつきます。これに対して、安全に係わる部品等については予防交換するが、それ以外については管理組合で修理交換部品を一式あらかじめ購入しておき、またそれらの交換に要する費用や時間についても保守業者と取り決めて、一定の範囲で業者の判断で即座に交換を実施してよいことにしておけば、故障やその前兆があった場合に最短の時間で修理できるとともに費用を大幅に抑えることが出来ます。
メーカーの修繕計画に従って全ての部品を予防交換したとしても故障を完全になくすことが出来るわけではありませんが、壊れたら迅速に直す体制では故障してから修理することが基本になるため必要な時に車の出し入れが出来なくなるリスクは増加します。駐車場についてあくまで故障リスクの最小化のために高額の予防交換費用を払い続けるのか、ある程度のリスクの増加を受け入れて費用の削減をはかるのかが問われることになります。リスク増加について利用者の同意を得たり、同意の得られない利用者は平置き部分や外部駐車場の利用をはかったりといったソフト面の対応を含めて、駐車場についてどこまで費用をかけてどのレベルの保全をはかるのが妥当かについて管理組合としての合意形成が一番重要なポイントになります。こうした合意形成にも、専門家による具体的な情報やアドバイスが役立ちます。
(投稿日:2014年12月28日 | カテゴリー:機械式駐車場の修繕等)