昨今、管理不全マンションという言葉が定着してきた。従来から管理不全の先にはスラム化や資産価値の低下があると言われてきたが、実はそれだけでは終わらない。写真の崩れかかった建物。これは築45年9戸のマンション。外壁は崩落、バルコニーの手すりも外れ、外階段の踊り場は抜け落ちており、現在は無人の廃墟になっている。いつ落下するかもわからない危険な状態でありながら放置され続けてきた。管理組合が機能せず、長年放置されたことから、所在がわからない区分所有者もいて、管理組合では何もできない状態であった。
この状況にようやく行政が空家対策特別措置法に基づく代執行での 取り壊しに動き出した。
ここまでいかないまでも、ごみ屋敷といっても過言ではないほど敷地内にゴミが積み上がったマンションもある。漏水が放置されエントランスのオートロックも壊れたままの状態のマンションも。こんな管理不全の予備軍といえるマンションが都内にある。閑静な高級住宅街にあり、どうしてと思えてしまうが、実際に起きている。管理不全マンションは決して、遠いところの問題ではなく、私たちが住み、関わる身近なところで発生しているのだ。
こうした管理不全マンションをこれ以上放置できないとして、東京都はマンション適正管理促進条例を今年3月に制定した。条例によれば、規約改正の有無、修繕積立金、長期修繕計画作成、大規模修繕工事の有無など管理不全の要因になりうる7項目の届出を義務化し、これらの一つでも該当があれば「管理不全の兆候があるマンション」と認定し、行政が指導・勧告できるというもの。従来から豊島区など一部の行政で管理不全に取り組む条例はあったが、それ以上にマンション管理の義務化を徹底した条例になっている。施行は来年4月。この条例では昭和58年以前に建設された6戸以上が対象になるが、今後、対象が拡大される可能性もある。今や社会インフラの一部といえるほどのマンション。ようやく対策がとられ始めた。
こうした条例に一定の効果はあるとしても、このような管理不全になる前段階で、手を打てることに越したことはない。管理不全マンションと知って買おうとする人はいない。資産価値がなくなる前、管理不全の兆候が少しでも起きそうであれば、その段階で対応することができたならば、管理不全解消に要する手間も費用もかからず、所有者にも有益であることは言うまでもない。管理不全の予防はマンション管理にほんの少し関心を持つこと、そこから始まることを改めて共有したい。
(マンション管理士 K.I)
(投稿日:2019年05月20日 | カテゴリー:未分類)