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PCBは危険なのに何故使われたのか?

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先日、私はマンション管理会社を通して「PCB入りの変圧器を2022年 3月31日までに交換すること」、との通知を受け取った。即ち「PCBは有毒物質であるので然るべき処理を行った上で期日までに破棄するように」と通知して来たものであった。


さて、ではなぜこの変圧器は危険である物質を使用しているにも関わらず、今まで使われてきているのだろうか?製作当時は危険なものではないと判断されていたのであろうか? 少し想像を含めてであるが、考察を進めてみよう。


日本語では単に「危険」と訳される、しかし本当は意味の異なるリスクとハザードという概念について、ごく簡単に説明をしたい。ハザードとは「危険と成り得る要素」そのもののことであり、このハザードが現実に災害として顕在化する確率を勘案したものがリスクである。


 例えば、太陽は近づけば全てを焼き尽くす途方もなく危険な物体でハザードそのものである。しかし誰もお天道様を危険視しない。それは太陽が身を焼き尽くすまでに近づく確率は天が墜ちて来る程度のあり得ない確率だからである。


一方、自動車は触ったからといって直ちに危険なものではないが、乗り続けていれば10万回の乗降に数回は生死に関わる事故に遭う恐れ、即ちリスクがあるから、注意は怠れないのである。


リスクとハザードの違いについて、より関心のある方は、取敢えずGoogleにでも当ってもらえればその違いについては詳しく説明されているので、それらをご参照願いたい。


皆様の元に管理会社からPCB変圧器の処分について通知と警告が来たときに、意識して欲しいことは、PCBがハザード物質であるからといって、直ちにそれをリスクであると取り違えて思い込まないことだ。PCBは、人体に入った場合には毒性を示すハザード物質ではあることには間違いないが、それが危険で排除すべき物質である、とだけ言われた際には「危険なのになぜ今まで使われていたのか?」の一考を挟んでみて欲しいのだ。


PCBは人間の身体に入ると有毒ではあるが、類い稀に劣化の少ない安定した、高性能な絶縁体である。逆に言えば、環境に漏出しない限り、これほど優秀で好都合な絶縁材は他に無く、それ故に嘗ては大いに賞賛され普及したのだ。当時はその安定性ゆえに、PCBを使用した製品が寿命を迎え破棄された後に環境に漏出するところまで考えが至らず、カネミ油症事件が発生するまでは、使用に伴うリスクは極めて低く、実質的にないと考えられていたのではないかと思う。


改めて念を押しておくが、経産省がPCBをハザード物質として対応を義務付けることに全く異論はない。環境漏出のリスクが少しでもあるのであれば、当然注意深く対応して然るべきだ。


私が問題に感じるのは、その通達が管理会社を通して住民に届く頃には、その理由が説明されることもなく、直ちに破棄しないと危険、ということだけが述べられた文章に簡略化されてしまっていて、中にはご丁寧に爆発物を扱う様な印象を与えるかの様なイラストまで付けられていることである。


今回はPCBを例にとったが、他にも例えば今は夢の素材ともてはやされているカーボンファイバーなども今は安全でも、将来その製品が破棄されて、もし焼却処分にでもされたらその焼却灰の粉末はアスベストと何ら変わらない危険物質に変貌する恐れがある。


この様に管理組合が扱う多くの建築物、特にエレベーターやポンプ類をはじめとする設備機器、構築物等もリスクとハザードを区別した視点から観察すると、設備業者や管理会社からは、知ってか知らずか?(多分、一部の業者の一部の人は承知の上で)直ちに対応しなければ危険だと脅される案件の少なからずが、単なるハザードであって、速やかに対処しなければならないリスクではないことが数多くあることが見えて来る。


この区別が出来るようになると無用な機器の交換や更新の推奨に対して反論も出来ると同時に、自分自身も不安に陥らずに済むようになる。


PCBについては、2016年8月施行のPCB特措法により明確な期限と重い罰則が定められており適正に対処する必要があるので、管理会社から持ちあがってくるものを鵜呑みにするのではなく、法的根拠やマンションとしてのリスクを見きわめ、一旦PCBを抱え込んでしまった以上は、リスクとハザードの違いを認識したうえで、慌てることなく環境に漏出することのないようにしっかりと心掛けてPCBと付き合っていくことが重要と考える。


様々な情報が飛び交う中、一人でも多くの人が、脅しあげられたり、慌ててしまったりすることなく、必要に応じた時に必要な物を選択できる賢明な消費者となれるよう願っている。                                


私有自楽



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