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コンシェルジュによる住居侵入事件からマンション管理を考える


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5月に起こった福山雅治、吹石一恵夫妻の住む都内、高級マンションにコンシェルジュが侵入した事件は記憶に新しいところです。9月8日に初公判が行われました。関心の高さから多数の傍聴人が押しかけ抽選での傍聴となりました。公判で、この事件は福山氏のファンであった48歳の女性が、福山氏のファンクラブに入りライブなどに通っていく中で、福山氏のギターの弾き語りの影響を受け、自らギターを始めたこと。前職をやめ、都内の福山氏が住んでいると週刊誌で報じられていたマンションの近くに引っ越しています。そして接客の経験を活かしてコンシェルジュの職を選び、派遣されたところが事件のあったマンションというもの。偶然と言うには偶然が重なりすぎる感はありますが、公判では計画性はなく、ただ「ギターを見たい」という衝動に駆られ侵入してしまい、吹石さんと鉢合わせしてしまったと証言しています。


管理会社が分譲マンションの部屋の鍵を預かるのは一般的ではありませんが、今回のケースでは居住者(福山夫妻)が管理会社と、そこに勤務するコンシェルジュを信頼して鍵を預けています。またコンシェルジュは日常の業務で居住者の出入りを確認することできる立場にあり、福山夫妻がともに外出したことを知ったうえで5月6日夜に住居侵入の犯行に及んでいます。


公判でも裁判長から自己中心的で身勝手な行為であると指摘されるなど、検察からは懲役1年が求刑されました。これに対し弁護側からは既に多数メディアで報道され社会的制裁を受けていること、計画性はなく、拘留中に被害者や管理組合、勤務先(派遣元)、管理会社への謝罪文と誓約書が送られているなど反省の態度があることから、執行猶予を求めました。


そして迎えた判決では懲役1年(執行猶予3年)となりました。


今回の判決の中で、ファン心理といえども、社会的に影響が大きい事件と言われるように、マンションでの平穏な生活を一転不安にさせることにより、社会を騒がせたコンシェルジュの身勝手な行動は許されるものではありません。計画性はなく「衝動的」に犯してしまったことに加え、預かった鍵へのアクセスは実務上容易に取り出せたことなど、情状酌量の理由の一つ挙げられていますが、犯行に至った背景にある鍵の管理体制(管理責任)については公判では全く触れられませんでした。刑事裁判は被告人を裁くためのもので、それも仕方ないことではありますが…


管理会社は居住者から信頼を得ることは当然であり、責任をもって管理する義務があります。しかし、今回はその信頼を揺るがせた事件であることに間違いありません。管理会社はこの女性から謝罪文を受け取った「被害者」という単純なものではありません。信頼を全うできず不安を招いたことは居住者や管理組合に対しての裏切りであり、加害者の一端とも言えるのではないでしょうか。そもそも容易に鍵を持ち出しできる体制にあったこと自体に問題があり、この杜撰な管理体制が事件の遠因となっているといっても過言ではないでしょう。管理会社は管理責任を有していることを真摯に受け止め、二度とこうしたことにならないように務めを果たすべき時だと考えます。


(マンション管理士 K.I)



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