民泊新法が来年2018年6月15日から施行されるなど、民泊に関する法的な仕組みは整いつつあります。ところが、一方でそもそも現在提供されている民泊のほとんどは現行法で必要な許可が確認できないヤミ民泊であるという調査結果が出ています。民泊新法は運用次第でこうしたヤミ民泊を一掃できる可能性を持っているように思います。
今年2017年3月1日に厚生労働省が発表した「全国民泊実態調査」によると、2016年10月~12月の調査期間中に、大都市圏(東京23区および政令指定都市)で8,200件の物件が民泊仲介サイトに登録されており、そのうち許可が確認できたのはわずか150件(1.8%)となっています。(全国では15,127物件中、2,502件(16.5%))
せっかく新法が施行されても、それを守らないヤミ物件が野放しのままでは意味がありません。
新法では民泊の提供に関わる次の3者に届出または登録を義務付けています。
①の届出書式には「管理規約に民泊を禁止する定めがないこと」などを民泊ホストが届出るチェック欄が設けられており、これに対抗するための規約改正案については前回のブログで取り上げたとおりです。
では、現在ヤミ民泊を提供している(または今後提供しようとする)民泊ホストは新法が施行されたら上記①の届出をするでしょうか。
残念ながら現在のヤミ民泊ホストの多くは、実際の運営は③の代行会社に丸投げするなど面倒なことには関わらず、こっそりと金もうけだけをしたいという人たちが主流のようです。従って、届出によって自分が民泊をしていることを表に出して管理組合と誠実に向き合うようなことはせず、これまでどおりヤミ民泊のまま発覚した場合の言い逃れ(友人を泊めただけ等)に腐心するケースが大部分のような気がします。
一説では全国で5万件とも言われる民泊物件について、数万人にのぼる個々のヤミ民泊ホストを一人ずつモグラたたきで追っていく方法では、現在のヤミ民泊を大きく減らすことは出来ません。
私見ですが、新法の運用次第ではこうした状況を根本的に変えることが出来るのではないかという期待と、本当にちゃんとやってくれるのかかなり心配だという不安の両方をもっています。
その運用方法とは、②の仲介サイト会社に「サイトへの掲載にあたり、①の届出がされていることの確認」を義務付けること、③の運営代行会社に「新法施行日以降に契約が存在する全ての物件(既存ヤミ(?)物件を含む)について、管理組合(マンションの場合)や町内自治会(戸建ての場合)に以下の内容に関する通知と受領確認」を義務付けることです。
実際、②についてはこうした義務付けをする方向だとの報道もありました。
民泊ビジネスのインフラを提供するこれらの企業が違法なヤミ民泊の片棒をかつがないよう、上記のような法律上の基本ポイントをおさえる業務の実施を記録させるという当たり前の仕組みにすれば、ヤミ民泊のほとんどは一掃されるのではないでしょうか。
「仲介サイト」と「運営代行会社」の登録制では、国に業務状況の立入検査権限や不適切な業務が改善されない場合の登録廃止の権限も与えられており、この仕組みはマンション管理適正化法に似ています。特に「運営代行会社」は業務の性質上必ず日本国内に事業の実体を担う企業があるはずであり、登録を所管する国交省が、過去にマンション管理適正化法の施行でマンション管理業界を一変させた手腕を再び発揮すれば、実効性のある秩序の回復が出来るのではないかと期待します。
国交省によると、2016年末の全国のマンションストック戸数は633万戸、居住人口は約1,500万人とされています。また、前回も紹介した国交省のアンケートでは管理組合・区分所有者の約9割が自己のマンションでの民泊実施に否定的とのことです。
新法の施行にあたり、ヤミ民泊を一掃して全国1,500万人マンション住民の平穏な暮らしを守り、一方でルールをきちんと守った健全な民泊の発展につながるよう、今度こそ法律がちゃんと守られる仕組みを国が責任をもって整えていくことを見守りましょう。
(NK)
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(投稿日:2017年11月22日 | カテゴリー:未分類)