2021年9月に国土交通省から長期修繕計画のガイドラインの改正がありました。マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値向上のために修繕を繰り返しながら、永く住み続けられるように修繕費を積み立てる資金計画です。
しかし改正の長期修繕計画のガイドラインを一読して気になったのは、相談窓口の筆頭に管理会社が掲載されていたことです。確かに管理組合との管理委託契約書の事務管理業務の中に「本マンション(専有部分を除く。以下同じ)の維持または修繕に関する企画又は実施の調整」とあるように、管理会社が長期修繕計画書を有償無償に限らず提供しているケースがほとんどです。
国土交通省は長期修繕計画は無償の簡単なものではなく、ガイドラインに沿った長期修繕計画作成の有料化を提案しています。特に、大規模修繕工事を実施後は修繕積立金の不足が想定できますので、将来資金不足にならないように、5年ごとの見直しも行うようにコメントしています。
長期修繕計画に沿った修繕積立金は管理組合の資産ですが、その管理は管理会社にお任せです。そのため管理会社は修繕積立金の総額を常に把握していますので、大規模修繕工事を始めとして長期修繕計画に沿った工事について、元請と称して高額な工事の見積もりの提案は当たり前になっています。
管理委託費だけでは大きな収益性が見込めない管理会社にとっては、修繕積立金を取り崩す工事をいかに収益に結びつけるかを試算しています。高額な工事見積もりであっても適正な価格で優良な施工ができる業者を知らない輪番制の理事会では効果的な相見積もりをとるすべがなく高額な工事でも管理会社に発注せざるを得ないのです。
2021年6月の朝日新聞に「マンション修繕積立金に不安」と称した投稿記事を見つけました。現在支援センターで相談を受けている事例にそっくりです。
投稿記事は、『築約25年、40戸の分譲マンションで、2019年に外壁などの大規模修繕工事を6千万円以上かけて実施したが、今後もエレベーターや給排水管更新工事等で数千万円の修繕が必要になるとの事。莫大な金額を聞くうちに 次のような疑問がわいてきたという。①理事は1年の輪番制で建物管理の知識や経験は浅く、理事会や総会では管理会社が提案する修繕案等がそのまま通ってきた、②管理会社の見積もりは一番安価と説明するが、不要な工事も多いように思える、等すでに修繕積立金は底を尽き借り入れまでして、毎月の徴収金額が5千円値上がりする。今後の修繕を考えるとさらに値上げもあり得るという。我が家では修繕積立金の値上げが一番の脅威となっている』と投稿者は締めくくっています。
一方支援センターに寄せられた相談事例は、築26年で40戸、5階建て2棟、大手管理会社が9,200万円の修繕積立金を狙い、急ぐ理由がないのに2021年4月の定期総会を待たずに2021年2月に臨時総会を開催しました。
その結果、総金額7,980万円程の工事(①大規模修繕工事60,500万円、②エレベーターリニューアル油圧式をロープ式に変更工事1,694万円、③自動ドア装置更新工事78万円、メーターボックス交換工事79万円、宅配ボックス交換工事79万円)が、管理会社とそのグルーブの施工会社の見積もりだけで総会に提案され、承認されました。それらの工事を実施することで、永年かかってようやく貯めた修繕費の残額は1,220万円になってしまいました。
組合員の意識の低さもさることながら、あまりにも今回の管理会社の不誠実なやり方に疑問を持ち、4月の定期総会に理事に立候補したのが現理事長です。 不適切な管理会社をいまだ変更できずに日々の理事会運営を継続してる中で、支援センターも相談を受けながら支援をしています。
管理組合会員の理事会や総会に出席していると、相見積もりの業者の情報が得られることが多く、管理会社の元請工事の見積もりに対して相見積もりをとる支援をするようになりました。
その方法は、安かろう悪かろうにならないよう、また、統一した工事内容でないと管理会社の見積もりとの比較ができないため、まずは管理会社の見積もり金額を黒塗りして他社に相見積もりを依頼します。また、管理会社の見積もりにメーカー名と品番が記載されていない場合があるので、必ず記載するように依頼をしています。
公平性を担保するために相見積もりの業者に対して管理会社等からの見積もり金額は、開示しないために黒塗りは必須です。大手管理会社になると多くの工事業者が協力会社になっており、その場合は、相見積もりを断られますので確認が必要です。 下記が相見積もりの成果事例です。金額はすべて税込みです。管理組合が気がつかない間に、どれだけの修繕積立金が管理会社の儲けになっているのか、ご理解いただけると思います。マンションの資産を目減りさせない相見積もりの取り方を教えます。
①管理会社経由業者 7,674,700円 ➡ 相見積もり業者 3,872,000円
※管理会社作成の長期修繕計画では800万円が計上されていた。
②大手管理会社元請 2,930,040円 ➡ 相見積もり業者 1,969,000円
①大手管理会社元請 2,220,000円 ➡ 相見積もり業者 1,611,500円
②中堅の管理会社紹介業者 2,316,600円 ➡ 相見積もり業者 1,456,400円
大手管理会社元請 2,350,000円 ➡ 相見積もり業者 1,540,000円
大手管理会社元請 23,100,000円 ➡ 最安値相見積もり業者 15,730,000円
大手管理会社契約金額は164,430円(税込み/月額)で戸あたり2,835円
➡ C社との新規契約は76,560円(税込み/月額)で戸あたり1,320円。
※その差額は月額87,870円で、年額1,054,440円の削減
大手管理会社元請見積もり 2,024,000円 ➡ 最安値相見積もり業者 1,402,280円
メンテナンス会社(メーカー)から一斉部品交換工事の見積もり 33,000,000円
➡ 支援センターの専門家がメンテ会社同席の上、現地調査を実施、アドバイスし、まずは電気部品交換のみの再見積もり275,000円を提案させ、理事会が承認実施した。 見積もりに品番も入れるように専門家が依頼した。
独立系のメンテ会社から修繕工事一式の見積もり 2,882,000円
➡ 支援センターの専門家にエレベーターの設置年月日と機種等の情報をメール送信し見積もりを見てもらい次のアドバイスを受け電気系統のみ工事を実施した。
予防保全ですべての部品交換工事の提案になっているが、後5年程でリニューアル工事の提案の可能性があるので、今回は見積内容の電気系統の7部品の交換は264,000円は実施したほうが良い。
※大手管理会社はマンション保険が2021年1月から上がることの情報の提供をせず、値上げ前に支援センターの情報をもとに4社から見積もりをとり、保険料の値上げ前に契約を決定した。
・2020年12月31日までに契約をした場合 2,610,090円
(2020年12月30日~2025年12月30日)
・2021年6月30日の満期で5年契約をした場合 3,691,210円
(2021年6月30日~2025年6月30日)
①大手管理会社グルーブの建設会社見積金額 55,660,000円
➡ 施工会社(グループ会社)の責任施工で工事を実施する提案が管理会社からあったが設計監理方式で6社の競争見積もりにより35,750,000円で別の施工会社に発注することができた。グループ施工会社に相見積もりの参加の依頼をしたが断られた。
②大手管理会社から見積もりが提示された金額は26,300,000円
➡ 管理会社にお任せで良いとの理事の意見もあったが、複数社の競争見積もりが重要という理事の意見で、設計監理方式で4社による相見積もりで19,800,000円で発注することができた。管理会社紹介の施工会社も参加したが、最高値で受注できな かった。
(投稿日:2021年11月10日 | カテゴリー:未分類)