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マンション管理組合の健全な運営に役立つヒント集

デキる理事会”がやっている、適正な管理実現のための極意

マンション管理が見直される時代へ

これまでマンションの管理は理事会と管理会社が中心になって行われてきました。しかし、残念ながら、一部を除き多くのマンションの区分所有者の意識のうえでは、これら管理面のことは、やや後回しにされる傾向があったように感じられます。それが、2018年宅建業法の改正により中古マンション購入時に建物の状況をチェックする「インスペクション制度」が開始。2020年4月には東京都の条例に基づく「管理状況届出制度」により、対象のマンションでは管理状況の届出が義務化されました。さらに6月には「マンション管理適正化法」の改正が決まり、自治体による「管理計画認定制度」(2022年施行予定)や、マンション管理業協会による「マンション評価制度」(2022年開始予定)などマンション管理の優劣を評価する制度の導入が続々と予定されています。

管理の「評価」によって何が起こるのか

 管理が「評価」される時代になると、その「評価」がマンションの居住の快適さを左右するとともに資産価値にも影響していくと考えられます。従来、不動産の価値は立地や築年数、周辺の生活環境などが重要視されてきましたが、これからは管理のよしあしも価値を判断する重要な要素になってくるということです。これまでも「マンションは管理で買え」と言われてきましたが、名実ともに適切な管理が求められる時代になってきました。

既に一部のマンション保険では管理の評価で保険料が変動したり、管理が適正で事故のないマンションでは割引を適用するなど目に見えるメリットもあります。これが今後はいっそう進み、管理の評価で資産価値が決まると言っても過言ではなくなるでしょう。必要な修繕を怠り、日常管理で手を抜き、管理にも無関心で修繕積立金の不足があっても先送りにするなど、何も手を打ってこなかったマンションと、しっかり管理されたマンションがあったときに、これからマンションを選ぶ人々はどちらを選ぶか、考えてみれば当然のことですね。残念ながら現在ではまだ、管理の評価をここまで積極的に意識している管理組合は限られていますが、これからは、評価を高める管理をすることがよりいっそう重要になっていくことがお分かりになるでしょう。

■“デキる理事会”がやっていること

 管理組合が管理会社の言いなりになっているところはありませんか。管理会社は管理のプロですが、あくまで所有するのは皆さん区分所有者です。管理組合運営は区分所有者から選ばれた理事会が主体的に動くことが重要です。あたり前のことではありますが、このあたり前のことができない管理組合が多々あることも事実なのです。区分所有者が主体的に活動している理事会を今回“デキる理事会”と名づけました。“デキる理事会”が管理組合運営するうえでお奨めのチェックポイントは次の表をご参照ください。既に実行されている“デキる理事会”もあろうかと思いますが、もしまだでしたら、今からでも検討をお奨めします。

■“デキル理事会”の基本

理事会が、できる、できないの、分かれ目になるのは次の2点です。一つは「管理会社任せにしないこと」、もう一つは「管理を意識すること」です。後者については理事会はもちろんのこと、その背後にいる区分所有者が管理を意識できるかどうかで、管理の質は大きく変わります。区分所有者の意識が高まれば、おのずと適正な管理が実現でき、管理への評価が高まり、資産価値も維持・向上できることになります。

マンションでの快適な居住環境を維持するとともに、大切なマンションの資産価値を維持・向上させるため、今年は“デキる理事会”となって管理組合活動されることを期待します。

“デキる理事会”の12のチェックポイント

主なポイントコメント(効果など)
①管理規約に目を通す➡マンション内ルールの基本。支出の可否などの判断の基準にもなるので一読のうえ、理事会に持参する習慣を
②敷地内の建物・設備見学ツアーの実施➡設備は意外と知らないもの。エレベーター、給排水、消防設備などを知ると修繕や更新の際に判断しやすくなる
③管理会社が同席しない理事会を開催し、1年間の実績評価と更新についての検討➡毎回でなく年に1度でも、管理委託契約更新検討の際は退席させるとよい。評価することで緊張関係が生まれる
④相見積もりの取得➡大規模修繕はもちろんのこと、小修繕、点検、植栽管理や保険など複数社からの相見積もりで判断すると有効
⑤長期修繕計画を意識した理事会運営➡将来必要な工事を踏まえ資金計画を明確にすることで長期的な支出の判断や無駄な支出の抑制が可能に
⑥適正な修繕積立金の確保➡将来工事費不足に陥らないために、管理費とのバランス見直し含め、修繕積立金に不足がないようにする
⑦自治体の助成金の活用➡大規模修繕工事、長期修繕計画作成、LED化照明工事、防災備蓄品助成など自治体の助成を最大限活用する
⑧区分所有者への積極的情報開示➡理事会議事録や広報の配付など情報開示により透明性のある理事会運営への信頼感が増す
⑨防災活動への積極的な取り組み➡災害時の「在宅避難」が無理なく実現できるとともに、管理評価制度の項目には日頃の防災活動も含まれる
➉総会への出席者を増やす工夫➡「委任状」による出席では管理会社へお任せ管理の懸念も。電話やメール等で議場出席を呼びかけ関心を高める
⑪次期理事会への引継ぎの工夫➡今期理事会での協議が無駄にならないよう、引継書面の活用や次期理事会への前期理事の出席など工夫する
⑫オンライン理事会開催➡対面理事会の「三密」回避に加え、外部居住所有者にも理事として参加を促せることで役員なり手不足解消にも

マンション管理士 K.E

  
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